特定非営利活動法人 荻田修平基金
「NPO法人リンパ管腫と共に歩む会」の前身、「特定非営利活動法人 荻田修平基金」は、世界のリンパ管腫治療に多大なる影響を与えた小児外科医・故荻田修平先生の遺志を受け継ぎ、リンパ管腫に苦しむ世界各国の患者を支援する目的で2003年12月15日に設立されました(NPO法人格取得は2004年4月27日)。
1986年、京都府立医科大学小児外科医だった荻田修平医師は、リンパ管腫の管腔内に当時抗がん剤として使用されていた薬剤・OK―432(商品名:ピシバニール、中外製薬株式会社)を局所注入してリンパ管腫の縮小・消退を得る治療法「OK―432局注療法」を開始しました。その後、成功例の増加と共に共同研究も行われ、高い有用性が確認さ れ、日本国内ではリンパ管腫治療の標準として確立されていきました。しかし海外ではOK―432が流通していないため、海外の患者は OK―432局注療法を受けたくても自国で受けられず来日する以外の選択肢はありませんでした。さらに、本疾患の根本治療には、1回の治療に約1ヶ月の滞在を要し、治療回数も数回に亘るため、多額の費用を必要としました。荻田医師は、経済的な理由でOK―432局注療法を受けることができない外国の患者を何とか援助できないものかと思案を重ね、1992年9月自ら募金活動を展開し、そのきっかけとなったメキシコ人患児「カルロスちゃん」の名前にちなんで、「カルロスちゃん基金」を設立しました。
荻田医師が代表を務める「カルロスちゃん基金」は、リンパ管腫に苦しむ世界中の子供たちが、現地の医療事情や経済的問題に左右されることなく平等に治療を受けられることを目的に、薬剤OK―432の送付や、現地医師へ治療法を指導するなどの活動を展開しました。地道な活動は徐々に実を結び、治療に協力的な医師及び医療機関が少しずつ増えていきました。
しかし、道半ばで荻田医師は病に倒れ、2003年4月21日、55歳という若さで生涯を閉じられました。OK―432局注療法の開発者としてのみならず、「研究の成果を病に苦しむ全ての人々が享受できるように努力しなければならない」という信念を抱いて多くのリンパ管腫患者を救い、その惜しみないボランティア精神で世界のリンパ管腫治療に多大なる貢献を遂げられました。
荻田医師亡きあと、荻田医師の活動に賛同し共に活動していた関係者で協議し、「カルロスちゃん基金」を「荻田修平基金」と改称し、引き続き世界中のリンパ管腫患者の支援活動を継続する決意を新たにしました。
2018年、設立以来継続していたピシバニール人道的無償提供事業が提供企業側の都合により終了を余儀なくされ、世界中のリンパ管腫患者はOKー432局注療法へのアクセスを絶たれる事態となりました。経緯については、業界紙「医薬経済」に詳細が載っています。